第62章 森林診断師への道(2008.11.03)
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山で生活をしている以外、倒木をすることなどないだろう。5年前に、初めてまともな杉の大木を倒してから、どのぐらい倒したのだろう。山全体の1/10程度、本数的にはまだ30本そこそこの程度か。山小屋周辺にある木で太った木の直径は、優に80cmは超えている。この太さでは伐るのも怖いし、伐った後の利用にも、その用途が限られてしまう。伐るのに手頃な太さは、30cm以内のもので、丸太の利用にも、手頃な太さだ。極力、伐り易い太さの木を中心に、今までに、危うい状況は何度かあったが、さすがに倒す方向があさってに向くことはなくなった。倒木する木の重心をしっかり観察した上で、かかり木にならない隙間を狙い、適切な方向に倒すため、まずは受け口を切る。受け口の深さは幹直径の1/3程度が理想。次に、反対側の追い口を水平に切り、最後にフェリングレバーを梃の要領で使い、一気に倒す。木と木の隙間を狙って倒すが、木が45度まで傾かない間に、上部にある木の枝に引っかかると、十分な重力加速が働かないため、途中でかかり木となる。

それでもまだまだ修行不足から、かかり木となる場合が多く、その処理にひと苦労する。かかり木となった場合には、ロープを張ってその力で倒す場合と木回しに使うフェリングレバーを使い木の根元を回転させながら倒す場合がある。どちらも、危険な作業であり、また、それなりのパワーがいる。それでも、かかり木から脱出できない場合には、やむを得ず放置して、木から水分が抜け軽くなるのを待って、同様な作業で倒すことになる。

なお、かかり木となった場合、次の行為は厳禁とこの道50年の師匠から教えられた。

 @かかり木の相手の木の伐倒:さらに、かかり木になるなど傷口を深めるだけで最も危険な行為

 Aかかり木を浴びせ倒す:ボーリングのピンを飛ばして倒すようなもので危険

 Bかかり木の元を切る:伐ったところで改善されない場合が多く、何よりも危険

 Cかかり木の下は通らない:むやみに知らない森に入るのは危険

木が密集して逃げ場がない場合は、どうしてもかかり木となってしまう。その場合には、「巻き枯らし」を採用。ナタやノミを使って、木の皮を30センチ程度、環状に剥がす方法(環状剥皮)で、木の幹の皮をぐるりと一周、剥ぎ取ることで、立木のまま枯れさすもの。枯れて軽くなった木を必要に応じて伐採することもできる。あるいは残した木が風雪害により、倒れてしまうことを避けることも期待できる。残された木は、立ち枯れる木に支えられて、風雪や突風被害などを逃れ、ゆっくり大木へと太り始める。それなりに健全な森となっていくだろう。

「これであの痩せっぽちの桧、太りだすだろう」
「それにしても杉に比べると、成長が遅いね」
「その分、中身がしっかり詰まっているからね」
「それで桧はいい香りがするんかなぁ」
「樹木のメタボ診断士になれそうやね」
「幹回り85センチ以上は健康優良児か」
「お前も立派なもんだね。でも、身長を勘案すると、詰まり過ぎの感やね」

京都山小屋の住人

(次回に続く)