第71章 鹿網張りは腹ペコ(2009.8.1)
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温暖化の影響で、冬に積雪量が少なくなったことが、鹿の頭数が増えている原因の一つとも云われている。冬期を除き、夜の山道の道中に必ず出会うニホンジカ、確かにその数が増えていることは実感している。オスは枝分かれした立派なツノを持つ。枝の数は、雄としての強さの象徴だろう。今まで多いもので7つの枝のものを見つけたことがある。でも、秋の繁殖期を終えると、やはり首が疲れるのか、動きづらいのか、ポロリと根元から落ちるが、また、春から秋にかけて爪と同じで、伸びてくる。この点が同じツノを持つ牛との違いだ。春のあまご渓流釣りで、足もとや渓流の中でツノがよく見つかる。中には、かなり磨り減ったものもある。余程、意中のべっぴんさんの雌鹿の争奪合戦があったのだろう。やはり、おいどが魅力的な雌鹿なのだろうかとと要らぬ想像をしてしまう。また、彼らの運きは、とても躍動的で俊敏だ。京都のお隣、奈良の公園にいる野生の鹿は、観光客から鹿煎餅をもらい、のんびり歩み寄って来る。その仕草はどう見ても、牛科に属するカモシカのような動きである。一方、山にいる同じ鹿は、急斜面を一気に駆け上がる。その動きを見ると、オリンピック選手ですら到底、かなわない運動神経の持ち主だ。彼らの好物は、まだ柔らかい芽で、雪解けが終わり、新芽が芽生える時期になると、根こそぎやられてしまう。今までに、秋の時期にせっせと拾い集めた何百個の団栗の新芽をやられたことだろうか。

「鹿の背丈は、2メートル近い奴もいるよ」

「そんなに高いかなぁ。ジャイアント馬場なみの奴になるよ」

「本当にそうだよ。頭がこんなところにあるんだよ」

「それって、砂漠にいるラマじゃないの」

「テレビで見たんだから本当だよ」

「それじゃ、簡単に飛び越えられてしまうよ」

「でもまぁ、まずは杭をたてるべぇか」

「杭を地面に差し込む瞬間に腹の底から力を込めて、へそに全身の力を込めるのがポイントだよ」

「よおーと、ふー」

5本も杭立てをする頃には、不思議とお腹がグーグーと鳴り出す。秋の収穫時、お米を天日干する時に立てる杭立てと同じで、とてもハードな作業である。さらに田んぼは粘土質であるが、山は石ころだらけの荒地である。一本立ちさせるには、かなり厳しいところがある。網をめぐらした柵の中に入ってくるのが、本当に鹿なのか、またどのようにして入って来るのかは、見たこともないので定かではない。多分、飛び越えるよりは、下の隙間に頭をつ込んで、開放口をあけて入ってくるものと思われる。生態系のバランスを目指す広葉樹の森づくりの作業、長い目で見ると鹿のためなのだが、この思いは到底届くことなく、当面、鹿と人間の知恵比べが続きそうだ。ちなみに、杭に張る網は、海苔の養殖で使い物にならなくなったものを再利用のリユース商品で一家に一網のサンプル商品だ。他に画期的な方法はないものだろうか・・・。

京都山小屋の住人

(次回に続く)