第93章 生き物たちの囀り(2015.11.2)
------------------------------------------------------------------------------
漆黒の世界から東の空が薄っすらとみはじめる朝マズメの時間、一声に鳥たちの大合唱になる。季節により、その声の種類は異なるが、山から溢れんばかりの賑やかさは、この山に棲むんでいる全ての鳥たちの囀りが谷間の中を流れてくるもの。夏にはこのコーラスに蝉時雨のバックミュージックが加わる。深い眠りの中、始まりは静かに、徐々にコーラス音が聴こえ出し、やがて眠りから目覚める。朝のスタート、爽快な気分になる。

一方、漆黒の夜は鳥たちも含め夜行種以外の生き物たちにとっては、休息の時間であり、また、とても怖い世界なのだろう。それが朝マズメを迎えることで、その怖さから解き放たれ、お互いの無事を確認するかのような囀りに聞こえてくる。

夏は夜、森の奥からは梟の鳴き声や蛍も飛び交いとても心地良いよい時間帯だ。夜の帳が落ちる夕マズメの直前まで、蝉もお互いを確かめ合うように森の中から集団で交互に鳴いている。また、明日の無事を祈るかのような、あるいは今宵が最後の命の営みになるかもしれないと聴こえるノスタルジーの響きすらある。

このような営みが毎朝、毎夕、京に都があった昔からこの森で行われてきたのだろう。森には、鳥たちのほか、兎、狸、狐などの小さな動物や鹿、猪、熊の大型動物もいる。森の中の山小屋を除けば、人工的なものはない。人ですら森の中では、山小屋と同じ異質なものかもしれない。そんな存在に警戒しながらも、生きるための姿を見せてくれる野生動物たち、それでも年月を経て、違和感も薄れ山小屋も自分もその中に同化しているような錯覚がとても心地よい。森の深み、森度の深みに感謝したい。

この財産を守るための「森林環境税」の導入であれば、納得する立場である。時には賑やかな自然のオーケストラを聴きに、早朝の森に出かけてみたらいい。

「朝のコーラスでの目覚め、爽快だっただろう」
「すごく賑やかだったよ。でも昨晩は良く眠れなかった」
「山小屋の夜、そんなに怖かったのか」
「一晩中、熊のようないびきで寝れんかった」

京都山小屋の住人

(次回に続く)