第90章 日本蜜蜂(ミツバチ)の神秘(2013.10.6)
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山小屋でのスズメ蜂の巣営や風呂小屋で不注意にスズメ蜂に刺されたこと、そして、この春の日本蜜蜂の到来を受け、蜂の生態には興味があった。そんな中、夏の暑い最中、大学の市民講座(週2回・土曜日)に参加する機会があり聴講。子供の虫取りに対する好奇心、これを研究にしたある意味で羨ましい若い先生を中心とした授業だった。今で言うところの「虫オタク」の部類に入るのだろう。今、日本蜜蜂の飼育は、都会人のブームの一つ。4千円のやや高い受講料だったが、30名弱の熱心な生徒たちが集まっていた。年齢層の平均は60歳代半ばと思われる。京都はやはり狭く知り合いの先輩も参加していた。今回は、この授業の受講報告を兼ねその神秘を紹介したい。

(産業)
養蜂振興法により、業として蜜蜂の飼育を行う者は、届け出る必要があるそうで、更に2013年1月に振興法が改正され、この届出義務が愛好家にも拡大。蜜蜂と人との関わりは古く、エジプトやヨーロッパでは約5,000年前から養蜂が行われているとのこと。日本での本格的な養蜂業は明治初期にはじまり、これまで食糧生産など農業分野において大きな貢献をし、現在も農作物の約70%がミツバチによって受粉されており、苺や洋ナシなどの果樹を中心とした農業にとって重要な役割を果たしている。

(分布)
日本蜜蜂は日本にだけいる固有種ではなく、東南アジア全体に広く生息している「東洋みつばち」というのが正式名称で、東洋みつばちの亜種。西はパキスタンからアフガニスタン、南はインドネシア、北は中国までで、日本は東端および北限であるとのこと。国内の北限は、下北半島で北海道には分布していない。日本猿の北限もやはり下北半島で、今から20万年前くらいに日本海の形成により隔離されたのが、その理由らしい。また、「ブンブン ハチが飛ぶ」の童話にも登場する蜂は、マルハナバチ。蜜蜂も含め蜜や花粉を求め花にやってくる昆虫を「訪花昆虫」と呼ぶそうです。体が大きくてよく目立つマルハナバチは、訪花昆虫の代表選手。この蜂はとてもおとなしく不意に刺してくることはない利口な蜂と云われています。

(構成)
日本蜜蜂はひとつの巣に普通1万〜5万匹の蜂がいて、女王蜂はもちろん一匹だけ。その数は女王蜂の年齢により左右されるらしい。日本蜜蜂の社会の構成とその寿命は次のとおり。
@女王蜂(♀):2年〜5年 A働き蜂(♀)、雄バチ(♂):30日程度

(蜂蜜生成)
働きバチが春から秋にかけて蜜を集め、そして蜂蜜となる。蜂蜜は、蜂の食料であるが、蜜蜂が花の蜜(花蜜)を採集し、巣の中で加工、貯蔵したもの。その生成までのプロセスは、蜜の成分であるショ糖を、蜜蜂の体内で唾液酵素などによって「ブドウ糖」と「果糖」に分解したものを巣に蓄え、羽ばたきにより水分を蒸発させ、糖度が80%になるまで濃縮されたもの。約8割の糖分と約2割の水分によって構成され、ビタミン、ミネラルなど微量の有効成分を含む。その味や色は蜜源植物、つまり花の種類によって様々で、特に高級品といわれるのがアカシアの蜂蜜。もちろん、お隣の公害大国のものでなく、純粋のMade in Jpanが最高級品で先生は日本産した口にしないそうだ。納得。
講義の中で食味クイズがあり、8種類の蜂蜜の花の種類を当てるもの。その中に一つだけ、偽物があり、面白いことに若い世代は、この偽物が一番おいしいと答える確立が高いという。味覚は食生活にも通じるものかもしれない。アカシアがあっさりとした甘味で一番おいしかったことを確認でき一安心。そばの花のものは、そばの香り、栗の花のものも特有の香りがあった。また、蜂蜜の中でも熱帯雨林から生まれたジャングルハニーは、シャーマンが使う薬の一つで、活性力をもつものとしてその効用の研究が進められているとのこと。蜂蜜は糖分のかたまりのため、糖尿病には医学的な常識では良くないと考えられるが、一方ではアカシアの蜂蜜は血糖値を上げにくい甘味料で糖尿病には悪くないとの話もあり、この不思議な作用について、これからのテーマとして掘り下げるのも面白いということでした。

(世代交代)
蜂の寿命は、その行動範囲の距離によって大きく左右されるらしい。働き蜂の寿命を聞いて、そんなに短命なのかと感じた。蜜源の距離が遠いほど、その寿命も相対的に短くなるとのこと。通常は1km程度らしい。でも働き蜂の中には、それでも90日程度だが、長寿な蜂もいるらしい。彼女らは適当に働いて、そしてサボル術を獲得しているためであるという。幼虫から産まれて、本格的に働ける時間は約15日程度であり、まさに命がけの世代交代である。
働き蜂の卵を産むのが女王蜂であるが、女王蜂の産卵能力と蜜源が豊富かどうかにより、蜜蜂の構成数は大きく変化する。女王蜂はこの社会で一番偉いのかというと、そもそもそのような概念はないのかもしれない。もちろん選ばれて、他の蜂よりは、一回りも二回りも体は大きい。しかし、女王蜂は、常に一部の働き蜂から、監視されている。監視という言葉が適切化かどうかは別として、常に触覚で体を触られ、体調を診られている。少しでもおかしな所があると、場合により、巣から退場となるらしい。確かに、女王蜂、働き蜂らが各役割を担うことで成立する社会であり、特に女王蜂が体調不良となるとこの巣は成立しない。まさに、人間社会よりもしっかりとガバナンスが効いている社会である。また、雄バチの役割であるが、春先から夏の繁殖期に500〜1000匹程度出現し、この季節に一度だけ、女王蜂が巣の外に飛び出す。これが女王蜂が新しい営巣地を求めて飛び立つ分蜂。その後に雄バチたちが、女王蜂の後を追って、飛びながら交尾する。ここでも、子孫を残すシステムがあり、より多くの精子を女王蜂の体内に取り入れるため、立ち代り交尾を行うのだが、交尾後、すぐに雄の交尾管が内臓から飛び出し、雄は即死。このシステムにより、多くの雄バチたちと交尾が可能となる。この行為はハネムーンの語源で、蜂の交尾は一妻多夫による合理的な遺伝子伝承システムある。

(防衛)
西洋蜜蜂は、日本には本来いない蜂であるが、多くの養蜂業者が飼ったいるのがこの蜂。オオスズメバチに対する自己防衛力がないため、巣が襲われて全滅するケースも報告される。一方、日本蜜蜂は、集団で囲み耐熱温度の差を利用して退治する術を身につけている。

「都会で蜂を飼う場合、人の家の花の蜜を吸ってきて問題ないの」
「その昔、植物園で網をもって蝉取りや池で亀をすくっていたら怒られたことがあるよ」
「勝手に花を盗撮して怒られたこともあったよ」
「主体が人か蜂かによって大きな違いがあるようには思うけど、確かに人のコントロール化で他人のものを搾取する後ろめたさはちょっぴりあるね」
「蜂が庭に来て嫌がる人はいると思うけど、飼育されているものか、自然のものか特定できないし、問題ないんじゃないの」
「はたして窃盗罪に該当するか、一度、告発したら」
「それより、蜂の後を追い、おすそ分けをもらう交渉をした方が賢いね」

今年の春、初めて日本蜜蜂が巣に入っていた。都会に比べ、周辺にきれいな花は少ないがこの秋の恵みが待ちどうしい。少しだけ、店子代として分けてもらうことにしたい。どんな色の蜂蜜になるかも、楽しみの一つだ。

「この巣箱、かなりお古だね。こんなぼろ家に本当に来るの」
「蜜蜂にとっては、これが高級な家なんだよ」
「なんでだろうね。どうみても新築の方がいいと思うけど」
「自然の中では、この方が自然だからだよ」
「なるほど、自然との調和か、一理あるね」

京都山小屋の住人

(次回に続く)