第36章 木の伐採は真剣勝負の世界(2005.9.12)
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直径50cm超の真っ直ぐに伸びた高さ20m以上の杉の木を切るとなると、切りこみを入れる順序を間違えたりすると、切り口に木の重みが掛かって圧迫され、一瞬にしてチェーン刃が切り口に噛まれてしまう。また、木肌に小石などがある場合、瞬時に火花が出て、チェーンソーの刃がやられてしまい、その後、全く切れなくなってしまう。あるいは、首尾よく切れたものの、倒れる方向がずれてしまったり(一度、ログハウスに直撃し、屋根を大破したこともあった)、他の木に引っかかって、どうし様もなくなるケースもある。さらに、倒れた後の根元の跳ね上がりにも注意しないといけない。予め、万が一の逃げ場を考えた上で、しっかりと腰を落としてのチェーンソー作業。これらは今までの木こり作業で、ほんの少し経験したこと。いずれにしても、切削作業はでは大胆な中にも慎重さが要求される。相手も生きものであり、ある意味、戦いに近い心境となる。その分、首尾よく、狙いの定めた斜面に一発で切り倒した時の衝撃と爽快感は格別のものがある。なお、切削作業のベストシーズンは、雪が舞う前の時期。雪解けの春〜夏までは、水分を根から吸収するため、なかなか切削することができない。

「倒れるぞぉ」
「ギィー・・・ドド・・ドッスン」
「フゥーッ」

昔から山で働く男たちにとって山のカミは、山に棲む木や花、鳥、小動物など山のすべてのものを支配するカミで、それらの恵みを与えてくれる存在だ。また、山仕事で危険な時などに手助けしてくれるもカミでもあり、いつも自分を見守ってくれるカミとして信じられていた存在だ。そのため、山仕事の男たちは山のカミを畏れ敬い、山のカミの怒りにふれないように決まりを作って守り、常に感謝の気持ちを捧げることを忘れなかった。それだけ、山仕事は常に危険と隣合わせの仕事ということになる。

切込みを入れる前には、手ぬぐいや束子でしっかり切る場所をきれいに清めてから作業にはいる。その前に、山に入る時と同様に、手を合わせることも忘れない。合掌。

「木を倒すのも命がけだけど、倒した後も大変だね」
「まずは、枝を落としてから、この斜面の下に滑らしながら行こう」
「やっと、ここまできたね」
「ここからはびくともしないよ」
「コロを使って、動かすよ」
「なるほど、頭も必要だね」
「最後はお神輿だよ、この上まで上げるよ」
「腰をしっかり落として、せーの、ファイト一発!」
「ギク・・・痛たた」
「こりゃ、だめだ」

京都山小屋の住人

(次回に続く)