第33章 山小屋ご近所(2005.7.10)
------------------------------------------------------------------------------

山小屋の地域は険しい山々に囲まれた地域です。メインストリートは本流の渓谷沿いに通っている。その道に沿って山をバックにして、家々が点々と在る風景です。さらに、本流の渓流は多くの支流を水の源としている。その多くの支流沿いにも、林道が通り、山と林道の僅かな平坦な場所に、へばりつくような感じで同様に家々が点在している。山小屋が位置する谷沿いには、わずか5軒の家しかない。その内の3軒は別荘と林業関連施設で、とても寂しい静かな谷筋だ。我が山小屋は村の奥のその奥の山の中にある。他の谷筋には、瀟洒な料亭が点在する場所があったり、家も何もないただの谷も多くある。同じ谷のように見えても、長い時を経て、現在の村の姿を作ってきたことになる。時には大雨などで谷ごと土石流で流された村もあると聞いている。戦後、都会での生活が豊かになるにつれ、村の過疎化が加速してきた。ほとんど村としての機能さえ、十分に発揮することさえ、今では難しくなってきた。谷間の風景は、目の前には緑の木々がはえる高い山が聳えている。日の出も遅く、日没も早い。特に冬の谷間はかなり厳しいものがある。背中も心も自然と猫背になりがちだが、都会にはない魅力がそこにはある。過疎化の問題の中、村では新たな問題が発生している。それは熊の里山への登場だ。多くの事故が報道されているが、その被害者の大半は老人となっている。山や畑作業中に襲われることが多くなっている。昨年の台風の影響が直接的な原因と言われているが、ここ5年間を見ても、事故は増加している。つまり、山に餌が少なくなり、昨年の台風で壊滅的な状況に陥ってしまったということだろう。

「この山小屋、熊は大丈夫?」

「熊、最近、特に視線を感じているよ」

「鈴とか、ラジオを鳴らすかの工夫をしたほうがいいよ」

「大丈夫だよ、熊は里山に移動し、山にはいないよ」

「本当」

「山には餌がないんだ。里山のゴミをあさっているよ」

「なるほどね。確かに山は死んだ状態だよね」

「山にカミが棲める自然にしないといけないようだね」

現在の村社会は、悪循環から抜け出せない状態です。でも、そんな厳しい環境に生きるからこそ、村人の結束も強いことも村の特徴です。現在、村一丸となって、熊の対応を検討、実行している。どんぐりの苗を植えることや山をきれいにすることももその一つです。熊が山の奥に戻って生きられることを考えていきたい。その鍵は、やはり都会人の自然への帰郷の想いではないだろうか。その動きは加速しつつあることが、一筋の明るさだ。

ところで、この春、新たな命が一つ村でも生まれた。おめでとうさんです。

京都山小屋の住人

(次回に続く)