第92章 続五右衛門風呂の湯は柔らかい(2014.11.29)  
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2007年秋に築いた風呂小屋が2011年の大雪の重みで歪んできたこともあり、思い切って解体したのが2011年7月。同時に解体した小屋から出た柱を活用するため、こちらも痛んできた山小屋のテラスも解体し再度、作り直す大工事を行った。風呂小屋の再建築の方は、杉の大木をチェーンソーで倒し、すぐさま皮を剥き、ログ材の確保の目処がたった翌年2012年4月に基礎づくりの着手開始。丸太をチェーンソーでカットしながら10段組み上げ、五右衛門風呂の完成は2013年8月盛夏。でも、風呂小屋のテラスはまだ板を張っていない状態。五右衛門風呂の釜は、そのまま使うことにした。前回の教訓である雪に強い小屋構造づくりや渓流から引いている簡易水道が寒さで凍りついて使いものにならないため、外の雪を風呂釜に入れ火をくべるもののぬるま湯にはなるが、入れるまでには至らなかった点、あるいは涙がでるほど大いに煙に悩まされた点の改良も必要であった。

前回の風呂小屋でも先立つものも乏しいため、総ヒノキ作りとはならなかったが、それでも水に強いさわら板を使いその香りは、リラクゼーション効果もあり、気持ちの良い小屋であった。今回の小屋は、杉丸太と屋根と床は杉板と総スギ作り。総材料費1万円也。雅楽に用いる笙に使う立派な孟宗竹も風呂内装に利用した。この材料は、近所の笙製作者からの廃材を頂いたもの。程よい湯加減になるまでの竹踏みが心地よい。

大雪の教訓を生かし、屋根は片勾配から45度の急勾配のとんがり屋根にし、冬でも湯が沸くように釜も「なんばん」で極力、熱を逃さないよう、露出度を少なくした。そのため、夏は30分、厳冬期でも90分ほどで湯が沸く。煙については、焚口の隙間から煙が漏れないようにすることは至難の業で難しいため、小屋自体に開放感を持たせ、煙が出ても小屋の中でむせることはない。でも、その分、冬は寒いが「家のつくりようは夏をもって旨(むね)とすべし」を実践した構造となった。入浴後は産れたままの格好で、薪ストーブのある常夏の小屋まで戻ることになるが、フィンランドのサウナ・クールダウン方式と思えば、問題ないというか、野生動物以外に誰も覗く者もいないだろう。

「露天風呂もまんざらではないけど、屋根があると安心する」
「雨の日でも入れるしね」
「紅葉の森に囲まれて最高の気分や」
「雪景色を眺めての雪見酒もいいよ」
「あっ、ちぃ〜、火加減なんとかならんのか」
「五右衛門風呂はコツだよ」
「コツ、どんな」
「卵の黄身になればいいんだよ」
「なるほど・・・」

夏の夕暮れ時、一日の野良仕事で疲れた体を五右衛門風呂の優しい湯につかりながら、ヒグラシの音や風の香りなどを楽しむ。体を休め、風呂を楽しむことも含め、この感性が分る民族は少ない。日本人ですら、マンションのユニットバスやシャワーを利用する者にとり、この感性は忘却の彼方だろう。哲学者・和辻哲郎曰く「西洋の風呂は事務的だ。日本の風呂は享楽だ」森の中の五右衛門風呂は、まさにこの境地であり、ある意味で贅沢な代物だ。森に活かされていることに感謝し、合掌。

京都山小屋の住人

(次回に続く)